2010年11月28日

●ラヴズ・ボディ●

東京都写真美術館で開催中の

「ラヴズ・ボディ—生と性を巡る表現」展に行ってきました。




デヴィッド・ヴォイナロヴィッチ 《無題(転げ落ちるバッファロー)》1988-89年


エイズが芸術の表現に与えた影響を、1980年代から現在まで辿る展覧会。

狭い空間ながらも写真や映像が丁寧に並べられ、

激しいけれど厳かな雰囲気の展示でした。




ウィリアム・ヤン《アラン》 1989-90年


とくにウィリアム・ヤンというアーティストの「独白劇〈悲しみ〉より《アラン》」の連作は、

作家の元パートナーであり、HIVに感染したアランという男性の、

発病から死に至るまでを追ったポートレイトで、写真の下には手記が据えられています。

レンズに向けられたアランの表情、目の光が次第に薄れて消えていくのを辿ると

ほんとうに今まで生きていた人が目の前で息を引き取ったかのような、生々しさと痛みを感じました。


同性愛者は社会的なマイノリティではあるけれど、

彼等に対する“視線”はここ数年で変わったのだと思っていました。

しかし、政治や国家は未だ、彼等に歩み寄って手を差し伸べてはいないのだ

ということを改めて知らされたようです。


展示は来週まで。


「ラヴズ・ボディ—生と性を巡る表現」

http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-340.html

会場:東京都写真美術館(恵比寿)
会期:2010年10月2日(土)〜12月5日(日)
開館時間:10:00-18:00(木、金は20:00まで)
休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日) ※11月8日(月)は臨時開館   
観覧料:一般 800(640)円/学生 700(560)円/中高生・65歳以上 600(480)円


  

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2010年11月27日

●生命の絵画:麻生三郎●



麻生三郎展@東京国立近代美術館へ行ってきました。

麻生三郎(1913-2000)の作品をはじめて見たのは、1年ほど前、

小林画廊という銀座の画廊でした。

少し奥まったほの暗い部屋の中で照らしだされた

《ひとり》という作品を目にしたとき、

体が動かなくなって、自然と涙げ出てきたのを覚えてます。



麻生三郎《ひとり》1951年

そういう、絵画では得難い体験をさせてくれた麻生三郎の個展ともあって、

かなり期待して臨みました。


漸進的な様式の変化にともなって、簡潔に三章から構成された今回の展示。

戦後すぐの作風は、写実にこだわりながらも内面の葛藤と

身近なもの、とくに妻や子供への慈愛が表されていました。

同時期に描かれた裸体のシリーズからは、《ひとり》も含めて

戦後の混沌と暗さのなかで生命のあたたかみを手探りで求めようとする

作家の姿が浮かび上がりました。


続く<赤い空>のシリーズは風景と人とが溶け合い、描かれる対象は

より普遍化します。



麻生三郎《赤い空》1956年

見えない空気に押しつぶされるかのように、

しかしそれに負けじと地に足をつき佇む人。


麻生三郎の中心にはいつも「人」がいて、それは最晩年のより抽象化した作品にも

あてはまります。



麻生三郎《ある群像 3》1970年


カオスのなかにも、かろうじて人と判別できるような“手がかり”が画面のなかには残されていて

見る人は時間をかけてその姿をすくいとっていきます。

晩年にかけての色調はグレーを中心にくすんでいながらも

<赤い空>シリーズや裸体のシリーズにみられた鮮明な赤が

ところどころに散りばめられていて、

そこから生命のほとばしりのようなものが感じられました。

麻生三郎の絵画が全体的に暗いのは間違いないのですが

見ていて伝わってくるのは死への恐怖とか冷たさではなく

もっと熱く血のかよったものなのです。


ところで、《ひとり》という作品にはふたりの人物が描かれているのに

なぜ《ひとり》なのか、ということに関しては

向き合う二人が男女ではなく女同士であるということ以外、決定的な資料はないそうです。

展覧会に行った際には、この作品の前で考えてみてください。


「麻生三郎展」
会場:東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
会期:2010年11月9日(火)~12月19日(日)
    (前期:11月9日~11月28日
      後期:11月30日~12月19日)
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
     *入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日
観覧料:一般850(600)円 大学生450(250)円


  

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2010年11月25日

●銀河系と素粒子●







「イームズ・チェア」というこの椅子は誰しも見覚えがあると思います。

アメリカのチャールズ・イームズによってデザインされた、世界的に有名な椅子です。


チャールズ&レイ・イームズ夫妻による映像作品集のDVD

「EAMES FILMS:チャールズ&レイ・イームズの映像世界」を頂きました。





その代表作である「パワーズ・オブ・テン」について。


場面はシカゴのある公園でピクニックをしているカップル。

寝ころんだ男性の細胞を起点として、10秒毎に10のn乗の速度でカメラがズームアウトしていき、

視界はやがて公園、アメリカ、地球全体へと広がり

宇宙へと飛出し、やがて銀河系へと到達します。


その上昇するスピード感は、いくら3Dの鮮明すぎる映像をもってしてもかなわないの

鳥肌ものなのです。


さて、ひとたび到達した視点は今度

銀河系から地球、アメリカ、公園、男、細胞、遺伝子、原子、素粒子というように

ミクロの世界へと一気に下降、ズームインしてゆきます。


ズームアウト、ズームインともに当時の科学が説明することのできる最大・最少のものであり

それを行き来する私たちは人の素粒子のなかに、宇宙そして銀河系と同じような無限の間隔を覚えます。


ミクロとマクロの視点をもつということが視覚的・感覚的に捉えられ、

画面の小ささ、画像の粗さ、そういったものをはねのけてしまう

短くも凝縮された映像世界でした。







  

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2010年11月24日

●バーネット・ニューマン展●



最近、調子がよくないものの

展覧会に行く足だけは止まらずです。




「バーネット・ニューマン展」@川村記念美術館に行ってきました。


今回、東京駅から美術館まで直行するバス(1日1本!)を利用しようとしたのですが

私が東京駅でもたもたしてたせいで逃してしまいました。友よ…ごめんなさい。

というわけで家から佐倉駅、さらにそこからバスと約2時間かけて

ようやくいとしの川村記念美術館へ到着。


この美術館は行くまでの過程と、館内に入った後とがゆるやかに繋がっていて

うとうとと眠りにについてやがて夢を見始めるといった

感覚になります。


いつもは常設展を見てから特別展へという順路を辿るのですが

今回はいち早くニューマン展が見たくて、先に2階の特別展会場へ足を運びました。


まず思ったのは、前回のジョゼフ・コーネルのときにも感じた

川村記念美術館はキャプションの使い方。


まさにひっそりとつぶやかれているように壁に貼り付けられた言葉のひとつひとつは

作家から直接発せられているような存在感があり

作品と自然に溶け合っているのです。


ブログという場をかりて敢えて感覚的なことをいうなら

ニューマンの作品は「無音」だなあということ。


それはとりわけ、




《存在せよⅠ》1949年、油彩・カンヴァス、236.5 × 190.8cm、メニル・コレクション、ヒューストン

という作品を前にしたときに感じたことです。


自分をとりまく生きたざわめきの世界と自分とが遮断され

自分と作品だけになり、そのあいだには喜びの歌も、悲しみのメロディーも流れていない

時計の針の音さえしない。

それをロスコの親密さに対する「冷たさ」といってもいいのかもしれないけど、

決して作品は人を撥ねつけるような攻撃性をもっているのでもなく、

ただただそこに「ある」だけなのです。


作品はそこに「ある」し、自分もここに「いる」ということを強く強く感じさせる。


そういった経験を、ニューマンの作品は私に与えているように思いました。

言葉が抽象的すぎて自分でもいやになるけれど

いまの私にとってはしっくりくる表現です。


抽象表現主義の作家全般にいえますがとりわけニューマンの作品の場合、

その目の前に立つことをしないと始まらないと思うので

ぜひ、みなさん、まとまって作品が展示されているこの機会に味わってみてくださいね。



開館20周年記念展
アメリカ抽象絵画の巨匠 バーネット・ニューマン


会期:2010年9月4日(土)~12月12日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
主催:川村記念美術館(DIC株式会社)



  

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2010年11月23日

●映画「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」●




佐々木芽生監督「ハーブ&ドロシー」を見てきました。





いつも人がまばらなイメージフォーラムがほぼ満席状態。びっくり!

予告編はこちらです。


ハーブHERBとドロシーDOROTHYという、マンハッタンの小さなアパートに住む老夫妻の

現代アート・コレクションをめぐるドキュメンタリー映画です。

彼らはつつましやかな生活を送る公務員。けして手放しで豪華な生活を送れるお給料はないけれど

アートに対する貪欲さと愛情は並々ならぬもの。

まるで子供に接するかのようにアーティストや作品と向き合い、

一度手に入れた作品は、その価値が上がって高額になろうとも決して売却しません。

それは、

1.お給料だけで買える

2.アパートに収納できる

というシンプルな条件だけを満たしたうえで、

自らの眼だけを信頼し心から「気に入った」作品だけを選んでいるからこそ。

「わからない」作品に対しては臆面なく「わからない」と言いながら

「でも見た目がすきなんだ」と言い切れるすなおさ。

そんな夫妻はアーティストからの信頼も厚く、彼らに作品への意見を求めるアーティストの姿もありました。


世の中がこんな人たちばかりだったらアートの世界もさぞ潤うのでしょうが、

実際、快適に暮らすよりも作品を所有することに心血を注ぐという姿勢は、

価値観の問題であって

誰しもが真似できるものではありません。

また、この夫妻に子どもがいなかった、ということは大きいのかと思います。


彼らもそのことを十分に自覚していて、だからこそ自分たちのありかたを人に押し付けようとしない、

そんなところも素敵だなと思いました。


現代アートにおけるコレクターとアーティストの関係だけでなく、

彼らの人間性からも学ぶものは多かったです。


(映画館でみる必要はないかもしれませんが)ぜひ、ご覧ください。






  

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